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医療分野、美容分野において、最近よく耳にする「マイクロニードル」とは何か?についてご紹介いたします。
マイクロニードルとは?
マイクロニードルは「直径や長さが1㎜未満のマイクロサイズの小さな針」と定義されています*1。
・・・と言われても、なかなかピンとくる方はいないと思いますので、一例として、人差し指の上に載せた、長さ0.8㎜、先端付近の直径が0.05㎜のマイクロニードル(アレイ)を図1に示します。髪の毛の太さが0.05~0.1㎜ですので、それと同じくらいの太さです。とても小さい針だということがお分かりいただけますか。
図1 マイクロニードル(アレイ)
マイクロニードルのタイプ
マイクロニードルには、大きく分けて以下の二つのタイプが存在します。
針先端から裏面を貫く穴(貫通孔)のある「中空型」
⇒ 一般的な注射針もこのタイプです。
貫通孔のない「中実型」
シンクランドでは、レーザー加工技術を使って細い針の中心にさらに細い貫通孔を形成した、「中空型」のマイクロニードル(=ホローマイクロニードル)を開発しました。このホローマイクロニードルを使って医療分野/美容分野での製品開発を行っています。
マイクロニードルはどう役立つの?
マイクロニードルの活躍が期待される場面
マイクロニードルは一般的な注射針に比べて細く短いことから、痛みを感じにくい、見た目にも恐怖感のない注射器を実現できる可能性があります。
また、塗り薬の代替手段としてのマイクロニードルの活用も注目されています。皮膚の最表面には外界からの細菌や有害物質等から私たちの体を守るための角質層が存在することから、薬剤、特に分子量の大きな薬はなかなか吸収されません。一方、飲み薬の場合、吸収の過程で消化管や肝臓などの臓器を経ることで血中の薬品濃度が低下してしまうという問題があります。
マイクロニードルを活用すれば、角質層を越え、なおかつ消化管や肝臓といった臓器を経ることなく、安定的に血中へ薬を届ける(ドラッグデリバリーと言います)ことが可能になると考えられます。
マイクロニードルによるドラッグデリバリー
ところで、マイクロニードルは、皮膚のどのくらいの深さまで刺さる必要があるのでしょうか?皮膚に穿刺されたマイクロニードルの模式図を図2に示します。角質層は平均0.03㎜、その下にある表皮は0.2㎜程度の厚みがありますので、理屈上、それ以上の長さがあれば、針先は真皮まで到達可能です*2。
真皮には血管が存在し、その血管のそばで放出された薬剤は比較的短時間で血中に移行します。つまり、マイクロニードルを使えば、これまでの方法とは異なる新たなドラッグデリバリーシステムを構築すること可能となります。
図2_皮膚に穿刺されたマイクロニードルの模式図
最後に
ここまでの説明で、マイクロニードルの利用価値、有用性をご理解いただけたのではないでしょうか?う~ん、どんなものかはわかったけど、
・そもそも、こんなに小さい針が弾力を持った皮膚に刺さるの?
・生産性や安全性は大丈夫?
といった疑問を抱かれた方もいるかもしれません。確かに、実用に耐える製品に仕上げるには、こうした様々な課題を解決する必要があります。私たちはマイクロニードルが世の中の役に立つものと確信していますので、こうした課題に立ち向かい、一つ一つ解決していきたいと考えています。
以上、みなさまのご参考になれば幸いです。
*1 以下の文献より抜粋 青柳誠司:マイクロニードルの展望, 精密工学会誌/Journal of the Japan Society for Precision Engineering Vol.82, No.12,2016, 999-1004
*2 皮内に針を刺入する際、針と皮膚との間に生じる摩擦力の影響で、皮膚が穿刺方向に引き込まれます。そのため、実際には角質層と表皮を合わせた厚さを十分に上回る針の長さが必要になると考えられます。